私は、昭和60年に札幌医科大学神経精神医学教室に入局し、以後、臨床精神科医としてやってまいりました。その原動力となったものは人間への好奇心だと思います。
同じ病気、症状でも、ストレスと感じるところや悩みの内容、おかれた環境や人間関係は一人一人異なりますし、背景にある生い立ちや性格傾向も千差万別です。その複雑に絡み合った糸を解きほぐし、その人自身のストーリーや因果関係を浮かび上がらせていくには好奇心が欠かせません。
現在は、薬物療法で病気や症状はかなり改善することができます。が、皆様一人一人に、ご自身に興味や好奇心を持っていただき、ご自身の弱いところや反応パターンを理解し、把握していただきたい。そうすることによってよって、過去と現在が一筋の流れとなり、そして未来へと流れていきます。
少子高齢化、経済格差、他者不在の希薄な人間関係などの問題を抱えた、生きにくい現代社会をしなやかに逞しく生き抜くには、このような理解と把握、そして自分自身の人生を歩んでいるのだという感覚が必要だと思われます。
そのためのお手伝いを、微力ながらさせていただけたらと思っております。
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